絆で作る、梶謙製磁社の器。

梶謙製磁社には、最盛期、100人以上の職人が働いていました。現在は、規模を縮小して、少数精鋭のモノづくりに注力しています。なかには50年以上も絵付け作業に従事するベテランもいます。休憩時間や作業の合間には、和気藹々とした雰囲気が流れますが、いざ作業に没頭すると、工房は凛とした緊張感に包まれます。静かに、淡々と。器を使う人のことを想像しながら一筆、一筆に心を込める姿があります。

そして、その従業員たちを束ねるのが4代目。婿養子として梶原家に入った当時は、「焼き物の『や』の字も知らなかった」と言います。すぐさま有田窯業大学校へ1期生として入学。開設したばかりの窯業大学では、専門コースなどにわかれておらず、焼き物に関することすべてをひと通り学ぶ環境がありました。そんな環境が、幸いし、窯業の世界にのめり込んでいくのでした。特に、得意の化学をいかした釉薬の配合には夢中になり、それは現在も当社のひとつの強みでもあります。その後、34歳の時に4代目梶原謙一郎を襲名。景気の追い風も、逆風も経験することとなります。

振り返りながら「とにかく自分は運が良い人間」と語る4代目。謙遜すると同時に、常に周囲への感謝を忘れないことを大切にしています。そして、4代目と二人三脚で平成、令和時代の当社を支えるのが妻の浩子。いつも明るい縁の下の力持ち。最近では、SNSの更新にも積極的で、広報の役割も担います。従業員、そして、仕事を通じて出会う人々を大切にしてきた梶謙製磁社。その姿勢は、これからも変わりません。