型は、梶謙製磁社の財産。

江戸時代から「型」を使った焼き物を作っていた当社には、現在も多くの木製の型が残っています。その数は、2000点以上。黒牟田で続く他の窯元の手元には残っていないそうですが、当社に残る型は保存状態も良く、代々、大切に受け継がれているのです。型の裏を見れば「安政(1854-1860)」の年号が確認できるものもあります。また、梶謙製磁社で型を用いて作られた4尺(約121cm)の大皿は、ウィーン万博(1873年)に出展され、現在は、ヴィクトリア&アルバート博物館に展示されていると伝わります。

そんな4尺の型をはじめとした梶謙製磁社の財産を多くの人に見てもらおうと、当社では『型の美術館』を開設しています。

幸せを願って、鯛は右を向く。

数ある型のなかでも、目をひくのが、『鯛』の型。大きさも3寸(約9cm)から2尺8寸(約85cm)まで、さまざま。日本では、魚は左向けに盛り付けたり描かれたりするのが一般的ですが、梶謙製磁社の鯛の器は、みんな右を向いています。これは、『右肩上がり』などの縁起の良さを込めて作られたもの。当時の職人の遊びゴコロや使う人の幸せを願って作られたと考えられています。

現在も梶謙製磁社を代表する器のひとつとして多くの人に愛される右向きの鯛。型を大事にしながらも、型にとらわれることなく、時代や人々の嗜好に合わせたモノづくりを感じてください。